いつまで続く?マイナス金利
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アベノミクスの3本の矢の1本目として導入された日本銀行(日銀)の「量的・質的金融緩和(異次元緩和)」を補強するために導入されたマイナス金利政策は、金融市場に対して効果よりも混乱をもたらしています。マイナス金利政策は、いつまで続くのでしょうか。
アベノミクスと異次元緩和、マイナス金利導入までの流れ
いわゆるアベノミクスとは、デフレ経済からの脱却を目指して「金融緩和」と「財政出動」、「成長戦略」の「3本の矢」によりバブル経済崩壊から続くデフレ経済からの脱却を目指す経済政策であり、名目経済成長率3%を目標としています。
3本の矢の1本目として導入されたのが日銀の量的・質的金融緩和であり、世の中に出回る資金量を増やす量的緩和の手法と償還までより長期間の金融資産やリスク資産の買い入れを積極的におこなう質的緩和を組み合わせた金融緩和政策です。
その内容や日銀総裁の名前から「異次元緩和」や「黒田緩和」、また英語の頭文字をとってQQEとも呼ばれるこの政策は、一時的に大きな効果をあげたものの、続く財政出動と成長戦略の不在や消費税の8%増税、原油安や中国経済の混乱による先行き不安から失速し、2014年10月の追加緩和、2016年1月のマイナス金利政策の導入につながります。
マイナス金利政策とはなにか?
2016年1月に導入されたマイナス金利政策とは、市中銀行(金融機関)が日本銀行に持つ当座預金(日銀当座預金)の一部に対してマイナスの金利を付与することで預入に事実上の手数料を発生させ、預けているお金を市中に回すことを期待する金融緩和策です。
実際に住宅ローン金利の引き下げによる住宅着工の増加など、一部の需要喚起にはつながったものの、経済の先行きが不透明であることや、銀行が融資先の開拓ではなく手っ取り早い手数料ビジネスに転換したことから罪の部分が大きくクローズアップされる結果となりました。
マイナス金利政策が招いた日銀と銀行の隙間風
日銀はマイナス金利政策により押し下げられた実質金利が住宅購入や設備投資を刺激することを期待していましたが、実際には手数料ビジネスがより進展する形となり、日銀と市中銀行の間に隙間風を吹かせる結果となりました。その最たる例が三菱東京UFJ銀行の「国債市場特別参加者」の返上です。
「国債市場特別参加者」とは国債入札に有利な条件で参加することが可能にする特別資格であり、国が銀行や証券会社に国債を確実に発行するために与えている資格の取り消しは、大きな衝撃とともに受け取られました。
この背景にはマイナス金利政策が日本国債の利回りも引き下げたことで銀行が国債を保有する意義が薄くなったことがあげられ、国際市場特別参加者の返上は日銀と金融機関に吹きはじめている隙間風を象徴する出来事といえるでしょう。
銀行の首を絞めるマイナス金利とその影響
日銀当座預金に無為に積まれている資金を市中に流すために導入されたマイナス金利政策ですが、金融機関から見ればペナルティであり、特に中小企業や住宅ローンへの依存率が高く体力のない地方銀行の経営を直撃、景気回復の足を引っ張っていると言えます。
2%の安定した物価目標の達成に向けて、2016年9月の金融政策決定会合では追加緩和とマイナス金利政策に続く政策として、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入を決定するなど、金融緩和の方向性を維持するとしています。
大目標である2%の安定した物価目標の達成までは、マイナス金利政策は維持されると見ておくべきでしょう。
おわりに
導入から半年が経ったことで功罪両面が明らかになりつつあるマイナス金利政策ですが、その終了の時期は今に至るも見えていません。長期化することを前提とした対策が必要と言えるでしょう。